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Desire to the sky ~After Sun~ 第二話(1)

『俺はただ取り返したかった。』
『元に戻りたかった。』
『だから俺は…。』

『俺の名前は田中水季。』
『俺の願いは…。』



 長い、長い夢を見ていた気がした。それがどんな夢だったか覚えていない。思い出そうとはしなかった。思い出してはいけない、そう思ったから。俺は起き上がると制服に手をかけた。そこで初めて気がつく。
「今日から夏休みだった…。」
 制服を元に戻し、リビングへ向かう。無駄に広い廊下をずかずか歩いていった。夏の風が頬を撫でる。涼しさはすぐに消えまたもとの暑さにもどる。小さな庭。ブランコ、砂場、滑り台と公園と同じような設備が並んでいる。そこで遊ぶ子供はいない。この家は普通ではないことは誰が見てもすぐに理解できるだろう。それは外見も中身も同じだった。
「今日は電子レンジで自由研究をしよう。」
 リビング。ソファにだらしなく寝転び、テレビに向かって彼女、つぐみはつぶやいた。
「でもどうしようかな。」
 口にくわえるアイスの棒が上下に揺れる。つぐみは俺の妹。普通に見える彼女。少し短めに首元で揃えられた髪、涼しさを求めた薄めの洋服。どこにも変なところなど見当たらない。
「そうだ、卵を入れてみよう。」
 こいつが変なのは、その頭の悪さ。頭が悪いというと勉強ができないというイメージがあるのだが、彼女の頭が悪いは少し違う。勉強はできる。それは認めよう。勉強ではない。根が馬鹿なのだ。彼女は冷蔵庫に向かって歩いていく。それを俺は止めない。彼女を止めるのはいつも弟の仕事だった。
「つぐみ、レンジが壊れる。やめろ。」
「む。弟のくせに生意気だぞう。」
 のんびり話すつぐみに対し、弟の零は冷たくさらりと言い放つ。弟は冷たい。クールといえばかっこいいかもしれない。でもなににしても限度というものはあるわけで、彼のそれはその限度を超えていた。冷たすぎる。人見知りとか人が嫌いとか、そういうわけではなくて、その冷たい話し方が普通だと思い込んでいる。やはり弟も妹も変だ。なら俺はどうだ。俺は普通だ、そう信じたい。俺はつぐみが座っていたソファに座り、まだ話し続けている2人の声に耳を傾ける。
「やめろ。」
「いいでしょーべつに。壊れても私が魔法で直すからね。」
 つぐみはただ馬鹿というわけではない。そもそもなぜこいつが馬鹿なのに勉強ができるか。勉強すれば魔法が使える。そう思ったからだそうだ。今の年になってもう信じてはいないらしいが、アニメやマンガそういったものを目にする内に、その世界に飲み込まれていった。
「どんな?」
「治癒術だよ。『ひーる』ってね。」
 人差し指をたてくるくる回しながらポーズを決める。
「ならいいか。」
「よくねぇよ!」
 俺は閉じていた目を開け、2人に向かって叫ぶ。
「なんでー?」
「お前が魔法なんか使えるわけないだろうが!」
「使えちゃうよー、きっと。」
「つぐみならきっと使えます。兄さんは大人しくみていてください、馬鹿やろう。」
「も…もう好きにしろっ。」
 俺はまたソファに座り込みテレビをにらみつける。のけ者にされるのは慣れている。零の最後の『馬鹿やろう』は実はものすごくダメージを受けている。でもそれはいつものことで変わらない関係だった。
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No title

なんとか今日中にまとめた…
一応次の(2)も書きましたけど一気に出すとゲームの時間がなくなっちゃうわけでして…

とにかく横読み読みにくいと思うかもしれませんが、うりゃーと読んじゃってください。

(1)なんでまだわからないとことか多いかもしれませんが…
とにかく、感想とか質問とかまってますー
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